2025年12月5日に行われた最終抽選で、グループCにはポット1のブラジル、ポット2のモロッコ、ポット3のハイチ、ポット4のスコットランドが入った。5度の世界王者と、2022年のアフリカ・アラブ史上初の4強国と、52年ぶりの本大会出場国と、28年ぶりの復活国という、それぞれ語るべき文脈を持つ4カ国が揃ったグループだ。本記事では、4カ国の予選突破ルート、W杯における歴史的な立ち位置、対戦の構図を整理する。
最終登録メンバー(26名)の発表は開幕約2週間前。本記事は 抽選結果と予選突破までの情報 に基づくチーム解説。詳細な選手分析は最終登録後の別記事で扱う。
グループCの全体像
| 国 | 大陸 | 予選突破日 | 第何回出場 |
|---|---|---|---|
| ブラジル | CONMEBOL | 2025年6月10日 | 24回目(全大会連続) |
| モロッコ | CAF | 2025年(CAF予選首位) | 7回目 |
| ハイチ | CONCACAF | 2025年11月 | 2回目(1974年以来52年ぶり) |
| スコットランド | UEFA | 2026年3月 | 9回目(1998年以来28年ぶり) |
ブラジルはポット1(シード国)、モロッコはポット2、ハイチはポット3、スコットランドはポット4からの組み合わせ。ブラジルはW杯全24大会連続出場(唯一の記録)を更新する。スコットランドにとっては実に28年ぶりの舞台で、ハイチは1974年西ドイツ大会以来52年ぶりという歴史的な出場だ。
4カ国の試合日程
| 日付 | カード | 会場 |
|---|---|---|
| 6月14日(日) | ブラジル 対 モロッコ | New York New Jersey Stadium(ニュージャージー州イーストラザフォード) |
| 6月14日(日) | ハイチ 対 スコットランド | Boston Stadium(マサチューセッツ州フォックスボロ) |
| 6月20日(土) | スコットランド 対 モロッコ | Boston Stadium(フォックスボロ) |
| 6月20日(土) | ブラジル 対 ハイチ | リンカーン・フィナンシャル・フィールド(ペンシルベニア州フィラデルフィア) |
| 6月25日(木) | スコットランド 対 ブラジル | Miami Stadium(フロリダ州マイアミ) |
| 6月25日(木) | モロッコ 対 ハイチ | メルセデス・ベンツ・スタジアム(ジョージア州アトランタ) |
東海岸北部から南部、フロリダ、アトランタと、いずれも6月の湿度と気温が高い会場ばかり。コンディション管理がグループ突破の鍵を握る側面もある。
チーム別の立ち位置
ブラジル — 24大会連続出場の世界王者
ポット1から抽選されたグループCの最有力候補。南米予選(CONMEBOL)は2025年6月10日のパラグアイ戦で突破を確定させた。指揮を執るのはカルロ・アンチェロッティ監督——レアル・マドリードでCLを5度制覇した名将が2025年5月に就任した「初のW杯監督業」という意味合いも話題だ。
攻撃の軸はヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)とハフィーニャ(バルセロナ)のサイドアタッカーコンビ。ネイマール(サントス)も34歳・重傷明けで6度目のW杯メンバー入りを果たし、代表通算79得点という歴代最多記録保持者として健在ぶりを見せる。中盤はカゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)のアンカーにブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル)、ルーカス・パケタ(フラメンゴ)が並び、最終ラインはマルキーニョス(PSG、キャプテン)とガブリエル・マガリャンイス(アーセナル)が統率する。
W杯5度優勝(1958, 1962, 1970, 1994, 2002)の実績を持つ。直近2022年大会ではクロアチアに準々決勝で敗退したが、本大会での悲願6回目制覇を狙う。
モロッコ — 2022年アフリカ・アラブ初の4強、さらなる高みへ
2022年カタール大会でグループステージからノックアウトステージにかけてスペイン、ポルトガルなどを次々撃破し、アフリカ・アラブ圏として史上初の準決勝進出を果たした(最終4位)。今大会も主力の多くが残り、キャプテンのアシュラフ・ハキミ(PSG)を筆頭に世界屈指のタレントが揃う。
指揮はモハメッド・ウアフビ監督。前任者のワリド・レグラギ(2022年の快進撃を演出した名将)が2026年3月に退任後、パリ五輪でU-23を銅メダルに導いた実績を持つウアフビがバトンを引き継いだ。4-3-3の基本は継承。
注目は元スペイン代表・レアル・マドリードのブラヒム・ディアス(モロッコを祖父ルーツで2023年に選択)がNo.10候補として組み込まれた点。守護神ヤシン・ブヌ(カタール大会のPKストップが記憶に新しい)、アンカーのソフィアン・アムラバト(レアル・ベティス)ら「2022年組」が軸となる。
2022年大会は7回目の出場で準決勝進出という歴史的快挙を成し遂げており、今大会では「準決勝の再現以上」が現実的に語られるほどの地位を確立している。
ハイチ — 1974年以来52年ぶりの感動の帰還
1974年西ドイツ大会以来52年ぶり、しかも史上2度目のW杯本大会出場。CONCACAF最終予選グループCを首位突破し、北中米・カリブ海唯一の「2度のW杯出場国」となった。指揮官はフランス人のセバスティアン・ミニェ監督(2024年就任)で、コンゴ共和国やケニアなどアフリカ・カリブ系チームの指導経験を豊富に持つ。
中軸は歴代最多得点者のダケンス・ナゾン(エステグラル、代表76キャップ44ゴール)とフランツディ・ピエロット(チャイクル・リゼスポル、49キャップ33ゴール)の得点王コンビ、そしてジャン=リクネル・ベルガルド(ウルヴァーハンプトン)が中盤の創造性を担う。キャプテンはバスティア(リーグ2)の38歳守護神ジョニー・プラシッドで、代表79キャップの歴戦のベテランが本大会で歴史的な舞台に立つ。
フランス育成出身でハイチを選択した選手(ベルガルド、ジャン=ケヴィン・デュヴェルヌ、マルタン・エクスペリエンス等)とMLS/USL組のハイブリッド編成。1974年の本大会では3戦全敗(対イタリア/ポーランド/アルゼンチン)だったが、今大会での初勝利が現実的目標だ。
スコットランド — 28年ぶり帰還、しかも1998年と同じ相手
1998年フランス大会以来28年ぶりのW杯本大会出場。ステーブ・クラーク監督がUEFA予選グループC(デンマーク、ギリシャ等)を首位通過し、プレーオフで大一番のデンマーク戦を4-2で制して本大会切符を掴んだ。
注目の事実は1998年フランス大会でもスコットランドはブラジルとモロッコと同組だったという点。当時はブラジルに1-2で敗れ(開幕戦)、モロッコにも0-3で完敗し、グループステージ敗退。28年を経て、今度こそ同じ顔ぶれに雪辱を期す。
中軸はリバプールのキャプテン・アンドリュー・ロバートソン(代表92キャップ)、ナポリのセリエA王者スコット・マクトミネイ(代表69キャップ14ゴール)、アストン・ヴィラのジョン・マッギン(代表85キャップ20ゴール・歴代6位)。4-2-3-1 / 3-4-2-1のハイブリッドが基本布陣で、堅守をベースにセットプレーと縦への速さで勝負するスタイルだ。
スコットランドのW杯成績は過去8大会いずれもグループステージ敗退。今大会でスコットランド史上初のラウンド16進出が目標になる。
対戦の歴史
| 対戦 | 過去戦績ハイライト |
|---|---|
| ブラジル 対 スコットランド | 1974年WC(1-0)、1982年WC(4-1 ブラジル勝利)、1998年WC(2-1 ブラジル)。近年では2011年親善試合など |
| ブラジル 対 モロッコ | 主な直接対決は1998年(0-0 親善試合)。W杯では対戦なし |
| スコットランド 対 モロッコ | 1998年WCグループ(0-3 モロッコ勝利)。28年ぶりの再戦 |
| ブラジル 対 ハイチ | コパ・アメリカや国際親善試合での対戦。ハイチにとってブラジルとのW杯初対戦 |
| モロッコ 対 ハイチ | W杯では初対戦。CONCACAF対CAFの組み合わせ |
| スコットランド 対 ハイチ | W杯では初対戦 |
スコットランドにとってブラジル・モロッコとの対戦は28年ぶりの「因縁の相手」との再戦というドラマを持つ。また、ハイチにとってはグループ内全チームとのW杯初対戦となる。
突破の構図
ポット番号通りなら、シード国ブラジルがグループ1位、ポット2のモロッコが2位通過の最有力候補という構図。ただし、
- モロッコは2022年準決勝進出の実績と経験を持ち、「波乱を起こす側」から「本命を脅かす側」へと立場が変わっている
- スコットランドはロバートソン・マクトミネイ・マッギンというプレミアリーグ・セリエA主力選手を擁し、組織的な守備と縦への速さで上位を崩す力がある
- ハイチは客観的には最大のアンダードッグだが、フランス育成の高い技術と南米・中東でのタフな経験を持つ選手が揃う
3位通過の可能性(48チーム制では各グループ3位上位8チームも進出)を含めれば、4カ国すべてにシナリオが残る。ブラジルとモロッコの初戦(6月13日、ニュージャージー)がグループ全体の趨勢を決める可能性があり、注目度最高の一戦と言えるだろう。
まとめ
- ブラジルが圧倒的な実績で最有力候補だが、モロッコが2022年の旋風を再現すれば構図は変わる
- スコットランドは28年ぶりの雪辱戦という感情的なドラマを背負い、1998年と同じブラジル・モロッコに再挑戦
- ハイチの52年ぶり出場は大会全体の感動ストーリー、1974年以来初勝利なるか
- 詳細な選手分析・戦術考察は最終登録後の別記事で扱う
最終登録(開幕約2週間前)が発表されたタイミングで、各チームの主力選手とフォーメーション予想を含めた続編を公開予定。