5月後半、グループF4ヶ国の最終登録メンバー26名がすべて発表された。本記事はグループF徹底解剖(5月版)の “続編” として、各国の確定squadを軸に、予想布陣・キーマン・6試合プレビュー・突破シナリオまで踏み込んで分析する。
本記事は 抽選結果・登録メンバー・予選を含む事前情報のみ で構成しており、本大会の試合結果は一切含まない。
4ヶ国比較ダッシュボード
| Pot | 1 | 2 | 3 | 4 |
| 監督 | ロナルド・クーマン | 森保一 | グラハム・ポッター | サブリ・ラムーシ |
| 就任 | 2023 (再任) | 2022 | 2025 | 2025 |
| 発表日 | 5/27 | 5/21 | 5/12 | 5/15 |
| キャプテン | ファン・ダイク (Liverpool) | 遠藤航 (Liverpool) | リンデレフ (Aston Villa) | スキリ (Eintracht) |
| エース | デ・ヨング (Barcelona) | 久保建英 (Real Sociedad) | ギェケレシュ (Arsenal) / イサク (Liverpool) | (司令塔 Skhiri 中心) |
| 想定布陣 | 4-3-3 | 4-2-3-1 | 4-4-2 | 4-3-3 |
| W杯通算 | 11回 / 準V 3度 | 7回 / 16強 4度 | 13回 / 準V 1度 (1958) | 7回 / GS敗退のみ |
| 前回 (2022) | 準々決勝 (アルゼンチンに PK 戦敗退) | 16強 (クロアチアに PK 戦敗退) | 予選敗退 | グループ敗退 (フランス撃破) |
最も「スター揃い」のオランダ、 欧州主要リーグ所属率が史上最高クラスの日本、 アーセナル所属のギェケレシュ + リバプール移籍のイサクという 2 大エース を擁するスウェーデン、 組織的守備と Skhiri-Mejbri 軸の中盤 に絞り込んだチュニジア。タイプの異なる 4 チームの組み合わせで、 Pot 通り (オランダ 1 位、日本 2 位) のシンプルな構図にはなりにくい。
チーム別 deep dive
オランダ — クーマン体制の完成形
監督: ロナルド・クーマン (2023 年再任、選手としては EURO 1988 優勝経験。 W杯 1990・1994 出場経験者で、 W杯指揮は初)
26 名の構造: プレミアリーグ所属が 8 名 (ファン・ダイク・ガクポ・フラーフェンベルフ・ティンバー・ファン・デ・フェン etc) と最多、セリエ A は 4 名 (ラインダース・コープメイネルス・マレン)。ファン・ダイク (Liverpool) がキャプテンを継続、若き正守護神フェルブルッヘン (Brighton) が GK を任される構図。
予想 XI (4-3-3):
GK: フェルブルッヘン
RB: ダンフリス CB: ファン・ダイク CB: ファン・デ・フェン LB: アケ
CDM: デ・ヨング
CM: フラーフェンベルフ CM: ラインダース
RW: クライファート ST: デパイ LW: ガクポ
クーマンが好む 4-3-3。 デ・ヨングがアンカーとして中盤の底を完全制圧、その前にラインダース (Man City) とフラーフェンベルフ (Liverpool) という現代型ボックス・トゥ・ボックスの組み合わせ。 3 トップは経験豊富なデパイ (代表歴代最多 51 ゴール) を中央に、若手ガクポ (Liverpool) とクライファート (Bournemouth) がサイドを担う形が基本線。
論点: 2010 南アフリカ大会の準優勝以来、本気で世界一を狙えるメンバー構成という評価。一方で、 クーマンの大舞台での采配経験不足と、 守備陣 (ファン・ダイク 34 歳、 ダンフリス 30 歳) の高速対応 が後半戦の鍵。
日本 — 三笘不在を中村敬斗で埋める 4-2-3-1
監督: 森保一 (2022 カタール大会から続投、 W杯指揮 2 度目)
26 名の構造: 海外組が 21 名と過去最多級。プレミア 4 名 (遠藤・鎌田・田中碧・伊東)、ブンデス 4 名 (伊藤洋輝・菅原・佐野・鈴木唯人)、エールディヴィジ 4 名 (冨安・板倉・上田・小川)、リーガ・エスパニョーラ 1 名 (久保) など欧州 5 大リーグ + α でほぼ完全に占められる。 39 歳の長友佑都が 5 大会連続出場で、最年長の精神的支柱に。
重要な不在: 三笘薫 (Crystal Palace, 直近怪我) と南野拓実 (Monaco) は招集外。 左サイドの主力欠落をどう埋めるかが最大の論点で、選出されたのは中村敬斗 (Reims) と鈴木唯人 (Freiburg)。
予想 XI (4-2-3-1):
GK: 鈴木彩艶 (Parma)
RB: 菅原由勢 CB: 冨安健洋 CB: 板倉滉 LB: 伊藤洋輝
CDM: 佐野海舟 CDM: 遠藤航
RW: 久保建英 AM: 鎌田大地 LW: 中村敬斗
ST: 上田綺世
最終予選と直近親善試合で固まりつつある 4-2-3-1。 久保建英を右サイドに置きカットインで勝負させる形が確立、 鎌田大地 (Crystal Palace) はトップ下に。ダブルボランチは遠藤航 (Liverpool) + 佐野海舟 (Mainz) の組み合わせが本命。 9 番は上田綺世 (Feyenoord) で、ヘディングとポストプレーが武器。
論点: 1. 三笘不在の左サイドを中村敬斗が支配できるか、 2. 冨安 (今季出場時間限定) のフィジカルが間に合うか、 3. 暑熱地帯 (アーリントン/モンテレイ) でのコンディション管理 — の 3 つが運命を握る。
スウェーデン — ギェケレシュ + イサクの 2 大エース体制
監督: グラハム・ポッター (2025 年就任、元ブライトン / チェルシー監督。スウェーデン人ではなく英国人だが、 ヘッセルボリで監督キャリアを始めた縁あり)
26 名の構造: 欧州 5 大リーグに分散、特に プレミアリーグが豊富 (ギェケレシュ: Arsenal、 イサク: Liverpool、 リンデレフ: Aston Villa, キャプテン、 エランガ: Nottingham Forest)。プレーオフ Path B 勝ち上がりの勢いをそのまま本大会へ持ち込む。
予想 XI (4-4-2):
GK: ヨハンソン
RB: ホルム CB: イサク・ヒエン CB: リンデレフ LB: グドムンドソン
RM: アヤリ CM: カールストロム CM: スヴァンベリ LM: エランガ
ST: ギェケレシュ ST: イサク
ポッターが好む 2 トップの 4-4-2 が本命。 ギェケレシュ (Arsenal, 代表 36 試合 22 ゴール / スポルティング CP で 102 試合 97 ゴールの記録的得点力) + イサク (Liverpool, 2025 年に Newcastle から史上最高額級の移籍) という、欧州屈指の決定力を持つ 2 人を同時起用する贅沢な選択。
論点: 2 トップにボールを供給できる中盤か が最大の懸念。スヴァンベリ (Wolfsburg) を司令塔に置く想定だが、 ギェケレシュ・イサクの裏抜けに対するロングボールの精度が試される。守備は伝統的な堅守で、 キャプテンのリンデレフ (元 Man Utd → Aston Villa) が最終ラインを統率。
チュニジア — Skhiri + Mejbri の中盤コア
監督: サブリ・ラムーシ (2025 年就任、フランス系チュニジア人。ノッティンガム・フォレストとアル・ナスル監督経験者)
26 名の構造: 欧州 5 大リーグ所属は 6 名と Pot 4 にしては多め (Mejbri: Burnley、 Skhiri: Frankfurt、 Bronn: Salernitana、 Khedira: Augsburg、 Tounekti: Brann)。中東リーグ所属が複数いるのが特徴で、 アフリカ + 欧州 + 中東のハイブリッド構成。
予想 XI (4-3-3):
GK: ダーメン
RB: ヴァレリー CB: ブロン CB: タルビ LB: アブディ
CDM: スキリ
CM: ケディラ CM: メジブリ
RW: トゥネクティ ST: ザード LW: アシュリ
ラムーシが好む 4-3-3。 エリエス・スキリ (Frankfurt, キャプテン) を中盤底の支柱 とし、トップ下気味のハンニバル・メジブリ (Burnley, マン・ユナイテッド経由) が創造性を担う。 3 トップは推進力重視で、 トゥネクティ (Brann) が右からカットイン、 アシュリが左で同様の役割。
論点: 2022 カタール大会で 最終戦にフランスを 1-0 で破った経験 (グループ突破は逃したが) があり、 大物食いの DNA はある。今大会は組織的ブロックの維持と Skhiri-Mejbri の中盤運用が鍵。
6 試合プレビュー
6/14 (日) NED vs JPN @ Dallas Stadium, アーリントン
グループ F の幕開けにして、現代版「日蘭対決」。 2010 南アフリカ大会で対戦した 1-0 オランダ勝利以来、 16 年ぶりの公式戦。 オランダの 4-3-3 (デ・ヨングのアンカー) に対し、日本の 4-2-3-1 (遠藤+佐野のダブルボランチ) のミラーマッチが見どころ。 久保建英 vs アケのマッチアップ が日本の攻撃のクオリティを左右する。クーマンは「日本を侮らない」と発言しているが、暑熱地帯の試合で運動量勝負になれば日本側に分がある可能性も。
6/14 (日) SWE vs TUN @ Estadio Monterrey, モンテレイ
スウェーデンの 2 トップ vs チュニジアの組織 という古典的な構図。 ギェケレシュ + イサクという 2 大エースをチュニジアの堅守がどこまで封じ込められるか。 過去対戦 4 試合のうちチュニジアが 1 勝、スウェーデンは 0 勝・3 分という意外な歴史も。 メキシコ高地での試合になることが、北欧のスウェーデンには逆風になる可能性。
6/20 (土) NED vs SWE @ Houston Stadium, ヒューストン
Pot 1 vs Pot 3 の頂上対決。 オランダのファン・ダイクとスウェーデンのギェケレシュ、いずれもプレミアリーグで対戦経験のある両者の直接対決が見られる。 ギェケレシュ + イサクをファン・ダイク + ファン・デ・フェンが抑えられるか が試合の核心。両国は予選で 8 ゴール差以上の点差をつけて勝ち抜けており、攻撃力では拮抗。 突破争いの行方を大きく左右する 1 戦に。
6/20 (土) TUN vs JPN @ Estadio Monterrey, モンテレイ
日本にとって突破の可否を分けかねない正念場。 2002 日韓大会でグループステージで対戦し、 日本が 2-0 勝利した歴史がある。 24 年ぶりの公式戦。 チュニジアの組織的ブロックを 久保 + 鎌田 + 中村のトライアングル でどう崩すかが鍵。 メキシコ・モンテレイは標高 540m + 6 月の高温で、 暑熱対策が問われる。 引き分け以上で大きく前進、勝てば突破は射程内。
6/25 (木) JPN vs SWE @ Dallas Stadium, アーリントン
両国とも初対戦に近い (1936 ベルリン五輪以来の公式戦相当)。 ギェケレシュ・イサクの 2 トップに対し、 冨安 + 板倉の CB ペアがどう対応するかが最大の見どころ。 日本がここまで 4 点 (例: NED-1, TUN-2) 取れていれば 突破はほぼ確定だが、勝点状況次第で先発を回す可能性も。 スウェーデンにとっても 1 月以来の真剣勝負で、ポッター体制の完成度が問われる。
6/25 (木) TUN vs NED @ Kansas City Stadium, カンザスシティ
順位確定の最終戦。 オランダが消化試合になる可能性もあるが、グループ突破の上位確定にはきっちり勝ちたい。 Skhiri-Mejbri の中盤対オランダの中盤 という頭脳戦が見もの。チュニジアにとっては 1978 アルゼンチン大会のメキシコ撃破以来、 W杯本大会で大物食いを再現するチャンス。
H2H ハイライト
| 対戦カード | 過去戦績ハイライト |
|---|---|
| NED vs JPN | 2010 W杯 GS で NED 1-0 勝利 (スネイダー)。 親善: 2013 年 2-2 |
| JPN vs TUN | 2002 W杯 GS で JPN 2-0 勝利 (中山ゴール)。 直近: 2023 年キリンチャレンジで JPN 2-0 |
| JPN vs SWE | 公式戦は 1936 ベルリン五輪 (JPN 3-2 勝利) のみ。親善: 2002 年 1-1 |
| NED vs SWE | 過去 20 試合以上。直近は 2018 W杯予選で NED 2-0 |
| NED vs TUN | 過去 3 試合。直近 2009 親善で 1-1 |
| SWE vs TUN | 過去 4 試合。 TUN 1 勝・SWE 0 勝・3 分という意外な相性 |
日本にとって、 オランダとは 16 年ぶり、 スウェーデンとは事実上初対戦、 チュニジアとは 4 年ぶり。 各国とも最近の直接対戦データに乏しく、 「現代の編成同士で何が起こるか読みづらい」 組合せという 5 月版記事の評価は、 squad 確定後もそのまま通用する。
突破シナリオとタイブレーカー
48 チーム制の W杯 2026 では、 各グループ 1-2 位 + 3 位上位 8 ヶ国 が R32 に進出する。グループ F は Pot 配置上、突破候補が明確だが:
最有力シナリオ:
- オランダがグループ 1 位 (1 位通過の確率 60-70%)
- 日本かスウェーデンが 2 位 (拮抗、 互いに 3 位通過の保険あり)
- チュニジアは 3 位通過狙い
3 位通過のラインは「勝点 4」が目安。 1 勝 1 分 1 敗 (勝点 4) であれば 3 位上位 8 に入る可能性が高い。 1 分 2 敗 (勝点 1) では厳しい。
タイブレーカー順位 (FIFA 公式、2026 年大会から改定):
- 勝点 → 2. 直接対決勝点 → 3. 直接対決得失点差 → 4. 直接対決得点数 → 5. 全試合得失点差 → 6. 全試合得点数 → 7. フェアプレーポイント → 8. FIFA ワールドランキング
2026 年大会の重要な変更: 2018・2022 年は「全試合の得失点差」が最優先だったが、本大会から「並んだチーム同士の直接対決」が最優先になった。詳細は タイブレーカー解説記事 を参照。
グループ F は 直接対決の結果が突破順位を分ける 構図。スウェーデンの 2 トップが大量得点を狙うインセンティブはあるが、2026 ルールでは並んだチーム同士の試合の勝点 → 得失点差 → 得点が先に効く点を頭に入れておきたい。
日本視点 — ベスト 8 進出への道
森保 JAPAN は 2002 / 2010 / 2018 / 2022 と 4 大会連続で R16 進出 (突破は果たしたが、その先は越えられず)。今大会の現実的な目標は 史上初のベスト 8 (R16 突破) だ。
ベスト 8 進出のために必要な要素:
-
グループ突破ルートの計算 — 1 位通過なら R32 でグループ E (ドイツのグループ) の 2 位と対戦の可能性、 2 位通過なら別の経路。 オランダ戦で勝点を奪い 1 位通過する方が、 R32 以降の対戦相手が “軽く” なる可能性がある。
-
三笘不在のサイドアタック — 中村敬斗 (代表 11 試合) が初の W杯で十分な質を出せるか。 サブの伊東純也 (左 SB / RWG 可能) との使い分けも鍵。
-
冨安のコンディション — Ajax 移籍後の出場時間は安定しているが、 W杯 7 試合 (本大会最大) を戦い抜けるかは未知数。 代替案は板倉 + 谷口 + 渡辺剛の CB トリオ。
-
暑熱対策 — 6 月のアーリントン (テキサス)・モンテレイ (メキシコ高地) はいずれも気温 30℃ 超 + 湿度 60% 超が予想される。 試合中の水分補給・選手交代の使い方が結果を左右する。
-
PK 戦の経験値 — 2022 でクロアチアに PK 負け、 過去にも PK で痛い目を見ている。 GK 鈴木彩艶 (Parma) のセービング能力と、 PK キッカーの順番設定が見えない部分の鍵。
オランダ・スウェーデンという W杯通算 24 度のベテラン 2 ヶ国、 + チュニジアという「大物食いの DNA」を持つ Pot 4 と同組。 どの試合も油断できないが、 R16 進出 + R32 突破は地続きの目標。 26 名全員のコンディションを引き上げて開幕を迎えられるか、 ここからの 11 日間が運命を分ける。
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